ハイウェイゲーム「畜生ッ! 何だって土曜なのにこんなに混んでるんだ。後ろも見ないでハンドル切りやがって、大宮ナンバーのマークIIに5人も乗るんじゃねェ。だいたい土曜なんかに打ち合わせするKの奴が悪いんだ、所詮広告屋なんて輩はイモだよな。あーぁ、5時半まであと10分か、SDRで良かったぜ」。
渋滞した表参道の交差点で、二人乗りのFZRをかわし車の列の間にカストロールの匂いを残して、青山通りを駆け下る。
ガレージのシャッターを上げると、RC30のとなりにSDRをすべり込ませ、2階へと急ぐ。EDベータをたちあげて録画ボタンを押す、15秒CM2本分のマージンでビデオが走りだす。
「フーッ、間に合った。まったく午前中に起こされると予約すんの忘れちゃうからな、今度は電話予約のヤツでも買おうかな」。
ロバーツレプリカをガードナーに並べると、ベッドに倒れ込んでリモコンでモニターの電源を切り、留守電を聞きながら眠りに入ってしまう。
目が覚めるとVHSが3台とも回ってる、7時10分。軽くシャワーを使って散歩に出掛ける。山手通り沿いに最近多くなった屋台のレストランで夕食をすますと、道玄坂を下って行きつけのビリヤード屋に入る。一時に比較するとだいぶすいているけど、それでも30分待ち。カウンターの前の台から声が掛かるけれど、今日は一人で撞くと断って予約を入れる。空くまで四つ球を遊んでいると、パンチパーマのおっさんがやってくる。
「お兄さん一人かい?」
「賭けないよ」
「それでいいよ、20点でいいかい?」
「いいとこだね」
ポイントの入った白球を渡す。
「変な映画のおかげでポケットの台は増えたけど、こんな事も珍しくなったよなァ。ナインボールが流行る前は、どこに行っても主みたいにいつでもいるジイさんが、引けだの回せだのマッセだのと、関係ないのに教えてくれたっけ」。
おっさんに腕はタメくらいで、気持ち良く6ゲームほど楽しんだところでポケットが空いた。
「今度また一緒にやろうな、いつもこのくらいの時間に来るから」
おっさんに台を譲って、カウンターに玉を取りに行く。預けてあったキューを出してもらってテーブルへ行くと、おあつらえ向きに壁際の台。しかし隣はワンレン4人組、ジャマしなければいいんだけれど、番でもないのに長クッション側に立つ。16個の玉を散らすとローテーションで落とす、調子がいい。
気分に良いうちに上がって時計を見るとまだ11時前、オールナイトの2回目に間に合う時間だ。ファイロファクスを開いて電話でチェック、ハンバーガーを買って映画館へ、上映中に終電になる2回目は初日でもすいている。映画がエンディングに近づくにつれて、館内に酒の臭いが拡がる。スタッフロールの途中で席を立てば、ろくに映画なんか見ずに寝てしまうような連中が、おかまいなしに通路になだれ込んでいる。パンフを買い、人の流れに逆らって道玄坂をのぼる。
オールナイトフジをBGにパンフをめくっていると、クォークの発売日だったことを思い出す。
「しょうがないなァ、246もすいてたし、ドライブがてらABCでも行こうかな」。
U-12、SSS-Rに火を入れるが、ボンネットに若葉マークが付いている。
「またA子だなァまったく、初心者だったら初心者らしくオヤジのベンツにでも乗ってろよ」。
青山通りを内堀へ見附、三宅坂と来て左に、ミラーに4ッ目が光る
「バーカ、フォグまで点けてんじゃねェよ」。
千鳥ヶ淵で4ッ目も右折、代官町の赤信号で左に並ぶ。
「なんだセリカかよガキが、いや、あのバンパーはGT-FOURだな。サンルーフまで付けやがってミーハーめ、こっちも普段は同じRE71でもS履いてるんだぜ、本物のパワーを見せてやる」。
次のS字はマンホールの位置まで知っている。竹橋までで一ッ気にブッちぎり、調子に乗って神田橋から首都高へ。
いつになく流れている外回りを軽く流す。ここんところ取り締まりがきつくて、あまりハイペースの4つ輪は来ない。谷町を過ぎたあたりで、来た!RX-7カブリオレ、しかさず右車線へ、
「土浦ナンバーか、茨城でカブリオ乗ってもタコだって!」
パッシングに反応してペースが上がる7、三宅坂、一ッ橋と来て呉服橋で少し前が詰まるが、江戸橋で7が車線を迷ったスキにパス、環状線で最もきついコーナーへ、7はこのコーナーでつめようと迫る。
「そりゃ出し過ぎだ!」
ブルは4輪を鳴かせながらクリア、7はテールが流れてバリアに接触、
「田舎でひっそりと暮らすことだね。さあ、帰って寝るかな」。
1988/11/30発行 ぴあ刊「ぴあ's NiGHT」東京物語
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