ソルコーダ作戦

 日の出と共にオレは南の島に降り立った。
 今回の任務は、この島の北にある敵の基地から将軍を誘拐することだ。オレの名前は「7」、それ以上のことは関係ない、この島から脱出するまではオレには過去も未来もないのだ。
 未開の島には不釣合いとも思える銀のアンテナを背にして、オレは前進を始めた。樹木が鬱蒼と茂った森の向こうに果樹園が広がり、建物が見え隠れする。人影は見えない、チャンスだ。
 集落を抜けると左手の丘に建設中の施設が見える。H&P社製のバイノキュラーを覗くと赤備えの一団。これは敵だ。まさかオレが潜入しているとは気付くまい、見張りも置かずに一心不乱に作業を続けている。足場に幕がかかっていて何を作っているかは判らないが、もし完成すれば味方が不利になることは確実だ。
 しかし、あれだけの建造物を破壊するだけの装備は持っていない。今回の任務はあくまで将軍の誘拐だ。帰還したら報告だけはしておこう、後は後発隊が何とかするだろう。
 スイッチを押してGPSで確認する。間もなく川があるはずだ。そして丘を越えると見えた、あの川を渡れば中立地帯に入る。
 突然、左手から声が上がった。川岸で釣りでもしていたのだろうか、敵の斥候に見つかった。オレは一気に川へ走った。しかし背後で敵は何かを射出したようだ、マズい、水中では回避運動が取れない。オマケにヤツが発射したのはホーミング弾だ、赤い弾頭が弧を描いてこちらに迫ってくる。

 着弾!

 今回の任務のために新品の防弾スーツを着てきて助かった。シワも寄らないこのスーツは当然複合素材なのだろうが、デュポン社のケブラーが使われているに違いない、特有の黄色い表面がそれを物語っている。これなら20発くらいくらっても大丈夫そうだ。
 山が海と接しているこの辺りだが、海岸線には人の気配がある。中立地帯とは言ってもできれば穏便に突破したい。オレは山の稜線に進路を取った。ところどころに生える潅木から、たまに鳥が飛び立ってオレを驚かせる。
 山道は予想外に楽に越えられ、平野部が見えてきた。左に行けば近道なのだが、右には先遣隊が架橋したルートが確立されている。それに左のルートは別の敵の基地があるという事実が、スパイ衛星からのデータで報告されている。
 右のルートは、まるで海の中道のようだ。両側の海には魚の姿も見え、日は燦々と照り付けている。単調な行程だが安全に目的の基地の背後にでるには進むしかない。

 永遠と思える道も、やがて西に折れて、なんとかヤツらの見える位置にやってきた。全員が整列して、前に立った指揮官らしき男の話を聞いている。アイツが将軍だ。同じカーキ色の軍服にヘルメット、紛れたら見分けがつかないだろう、ここからは力押ししかない。
 連中が解散した瞬間オレは飛び出した。何が起こったか分からない兵士を尻目に、将軍の身柄を拘束する。少し暴れているが、このまま味方の基地まで連行だ。潜入路を逆に戻り始めたころ、太陽が真上に見えた。どうやら今日中に任務は遂行できそうだ。
 数時間後、オリーブ色の味方兵士に将軍を引き渡した。仕事を終えた男の背中を夕陽が照らしている。今回の任務からも無事帰投することができた、休暇はスキーにでも行くか、南の島はもうコリゴリだ。

 その3日後、将軍から得られた情報を元にして、味方基地は新たな要塞の建設に着手した。


1999/11/20発行 アスキー刊「ファミ通64+」巨人のドシン1

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